とあるご家族からのご相談。息子さん夫婦が築50年のご実家に同居することになり、二世帯リフォームを検討しているとのこと。
初回の打ち合わせでいつものように「どんな暮らしを実現したいですか?」と尋ねました。すると奥さんが少し困った表情を浮かべながらこう切り出されたのです。
「実は、キッチンのことでお義母さんと意見が合わなくて…」
・キッチンを巡る、見えない主導権争い
実家リノベ〜二世帯仕様〜のご相談で最も多くの時間を要するのがキッチンの問題です。料理は単なる家事ではありません。それぞれの家庭で培ってきた味、段取り、こだわりが詰まった、いわば「暮らしの中心」なのです。
お母様は朝早く起きてご主人のお弁当を作る習慣がある。一方、お嫁さんは夜型で遅い時間に翌日の下ごしらえをしたい。朝6時の包丁の音と、夜11時の換気扇の音。どちらも譲れない生活リズムです。
「私が使いやすいように棚を整理するとお嫁さんが困るみたいで…」
「でも、私も気を遣って自分の調味料は別の場所に置いているんです」
お二人の言葉からは、お互いへの配慮と同時に、どこか遠慮と不安が滲んでいました。
・夫側か妻側か、微妙に異なる距離感
二世帯同居において、同居する親が夫側なのか妻側なのかで求める距離感は驚くほど変わります。
夫のご実家に同居する場合、妻は「お嫁に来た」という意識がどこかに残ります。気を遣い、遠慮し、時に自分の居場所を見失うこともある。反対に、妻のご実家の場合は、夫が「居候」のような立場になり、発言を控えがちになる。
私たちがリフォームで最も大切にしているのは、この「見えない力関係」を可視化し、すべての家族が自分らしく暮らせる空間を設計することです。
・徹底的なヒアリングが導き出す、唯一無二の答え
先ほどのご家族の場合、私たちは何度もヒアリングを重ねました。朝の動線、夜の過ごし方、それぞれの料理スタイル、将来の介護の可能性まで。
その結果、導き出した答えは水回りをわけることでした。
広めのLDKにはメインキッチンを。子世帯の居住空間にはコンパクトなサブキッチンを。それぞれの「城」を持つことで、お互いの領域を尊重できる設計です。
冷蔵庫も2台。調味料の収納も別々。一見、非効率に見えるかもしれません。しかし、この「適切な距離感」が家族の笑顔を守るのです。
・家族の数だけ、正解がある
実家リノベ〜二世帯仕様〜にマニュアルはありません。完全分離がいい家族もあれば、ゆるやかにつながる暮らしを望む家族もいます。キッチンを共有しても何の問題もない家族もあれば、お風呂の時間すら気を遣う関係性もある。
大切なのは、「これが二世帯住宅の正解」という型にはめることではなく、その家族だけの答えを時間をかけて見つけることです。
だからこそ、私たちはヒアリングを徹底します。表面的な要望だけでなく、言葉にならない不安や遠慮、未来への希望まですべてを丁寧にすくい上げます。
・お互いを思いやる距離で暮らす
適切な距離があるからこそ自然に寄り添える。実家リノベ〜二世帯仕様〜が目指すのは、そんな関係性なのかもしれません。
我が家の実家リノベも二世帯仕様。家族構成や将来設計、個々のスペースと実家としての役割。いろいろ考えました。今では家族みんなが適度な距離感を保ちながら心地よく暮らしています。良ければ一度遊びに来てください。
あなたのご家族の「ちょうどいい距離」を一緒に見つけませんか。



