73分間の戦い、そして見えたもの
2025年12月12日、セブンハンドレッドクラブで開催されたスピードゴルフジャパンオープン。
アップダウンの激しいコースを、クラブを担いで駆け抜ける73分間は、私にとって忘れられない挑戦となった。
結果は最下位。スコア102、タイム73分。SGS(スピードゴルフスコア)は175.35。
数字だけを見れば惨敗。
しかし、このスポーツの奥深さと、上位陣の圧倒的な実力を肌で感じた一日でもあった。
「最下位からのスタート」——それが私の物語
「いつも最下位からのスタート」。
この言葉は、スピードゴルフだけの話ではない。
ゴルフも、マラソンも、学業も、私の人生は決して順調なスタートを切ったことがなかった。
ゴルフを始めた頃は、練習場で空振りを繰り返し、周囲の失笑を買った。
マラソンでは、最初の10kmレースで途中しっかり歩いたw
高校時代の成績も、入学当初はクラスで一番ドベだった。
しかしそこで終わらなかった。
負けず嫌いな性格が再び挑戦へと駆り立てる。
最下位だからこそ、伸びしろしかない。
トップとの差を冷静に分析し、戦略を練り、やり切る力で目標を達成する。
それが自分のやり方だった。
ゴルフでは独学で基礎から学び直し、練習を繰り返すことで今では80を切れるようになった。
マラソンでは初のフルマラソンを完走することができた。
学業では高校時代では文武両道を達成した生徒として表彰され、大学では建築コースの主席までいただけた。
最下位からのスタート。
それは私にとって、屈辱ではなく、成長の起点。
スピードゴルフという究極の挑戦
スピードゴルフは、通常のゴルフとランニングを融合させた過酷な競技だ。
ルールはシンプル。
18ホールを可能な限り速く、少ない打数で回る。
最終スコアは「打数+分数」で計算される。
例えば、私の場合は102打+73分=173。
つまり、スコアを10打縮めることとタイムを10分短縮することが同じ価値を持つ。
この独特のバランス感覚が、スピードゴルフの魅力であり、難しさでもある。
素振りは許されない。
目測のみで距離を判断し、迷わずクラブを選び、一発で打つ。
走りながら次のショットを考え、グリーン上でも立ち止まる時間は最小限。
心拍数が上がった状態で、冷静な判断とスイングの精度を保たなければならない。
ゴルフの技術とマラソンの走力。
私がこれまで別々に磨いてきた二つの要素が、ここで一つになる。
まさに今の私のための競技だと感じた。
圧倒的な王者、Rob Hoganの世界
この大会には海外からの招待選手も参加していたし、日本からトーナメントプロも参加していた。
今大会を制したのは、スピードゴルフ界の絶対王者、Rob Hoganだった。
スコア79、タイム45分25秒、SGS124.25。
この数字が意味するものを理解するには、私自身の結果と比較すればいい。
彼は私より23打少なく、25分以上も速くコースを回った。
Rob Hoganのラウンドを見ていて驚かされるのは、その判断の速さだ。
ボールの位置に到着するやいなや、一瞬で距離を測り、クラブを抜き、アドレスに入る。
その動作に一切の迷いがない。
まるで体が自動的に反応しているかのようだ。
彼のスコアカードを見ると、パーが10個、ボギーが6個、ダブルボギーが2個。
45分という驚異的なスピードで走りながら、これだけ安定したゴルフができるのは、膨大な経験と研ぎ澄まされた技術があってこそだろう。
しかし、彼も最初から王者だったわけではないはずだ。
きっと、数え切れないほどの挑戦と失敗を重ね、今の地位を築いたのだろう。
そう考えると、今日の最下位も、いつか振り返れば成長の一ページになるはずだ。
日本人トップ、新本達也の戦い
2位に入ったのは日本の新本達也選手。
スコア75、タイム50分14秒、SGS125.14。Rob Hoganに次ぐ素晴らしい成績。
新本選手の強さは、スコアとタイムの絶妙なバランスにある。
通常のゴルフで70台を出すことも容易ではないのに、50分で走り切りながらこのスコア。
日本人としてトップの座を守り続ける彼の存在が、私たちアマチュアに大きな目標を与えてくれる。
3位の大田仁選手(スコア80、タイム47分4秒)も驚異的なタイムを記録している。
上位陣は皆、50分前後でコースを走破しており、この「50分の壁」が一つの基準になっているようだ。
この壁を越えるには、ゴルフとランニング、両方の実力を高次元で融合させる必要がある。
まさに私が目指すべき目標だ。
最下位からの学び——戦略的分析
1番ホールからスタートし、いきなり実感したのは「走りながらゴルフをする」ことの難しさだった。
通常のゴルフなら、ショットの前に素振りをし、距離を確認し、風を読む。
しかしスピードゴルフでは、そんな余裕は一切ない。
目測で「だいたいこのくらい」と判断し、クラブを抜いて即座に打つ。
この「割り切り」ができないと、どんどんタイムをロスしてしまう。
アップダウンのあるコースでは走力も試される。
登りではペースが落ち、息が上がる。
その状態でショットの精度を保つのは至難の業だ。
下りでは逆に、勢いがつきすぎてコントロールが難しい。
そして何より、集中力の持続が課題だった。
73分間、一瞬たりとも気を抜けない。
通常のラウンドならカートでの移動中に一息つけるが、スピードゴルフにそんな時間はない。
この敗北を冷静に分析してみる。
問題は三つある。
第一に「単純な走力の不足」。
タイム73分は上位陣と比べて20分以上遅い。
これは純粋な走力とコース戦略の差だ。
第二に「ショットの精度」。
スコア102は通常ラウンドでも出る数字ではあるが、走りながらでは精度が著しく落ちた。
心拍数が上がった状態でのスイング練習が必要だ。
第三に「判断力とコース戦略」。
目測での距離感、クラブ選択、リスク管理。
これらすべてを瞬時に判断する能力が圧倒的に不足していた。
来年へのリベンジ戦略
自分には勝つための戦略を立て、やり切る力があると信じている。
それはこれまでの人生で証明してきた。
戦略1:走力の強化
来年の大会まで週3回のランニングを継続する。
ただ走るだけではない。
インターバルトレーニングを取り入れ、心拍数が上がった状態での体のコントロールを鍛える。
目標は10kmを50分以内で走れる走力をつけることだ。
戦略2:心拍数上昇時のゴルフ練習**
練習場に行く前に5km走る。
心拍数が上がった状態でボールを打つ。
この「疲労時練習」を週1回実施し、実戦に近い状況でのスイングを体に覚えさせる。
戦略3:目測とクラブ選択の訓練
通常のラウンドでも意図的に距離計を使わず、目測のみでプレーする日を設ける。
素振りなしでショットする練習も取り入れる。判断を早くし、迷いをなくす。
戦略4:コース戦略の研究
セブンハンドレッドクラブのコースレイアウトを徹底的に頭に叩き込む。
どこでペースを上げ、どこで慎重にプレーするか。リスクとリターンを計算した最適ルートを見つけ出す。
目標設定
– タイム:60分以内(13分短縮)
– スコア:90以内(12打改善)
– SGS:150以内(25ポイント改善)
この目標を達成できれば、最下位脱出どころか、中位グループに食い込める。
決して不可能な数字ではない。
上位者との差——これが伸びしろ
改めてスコア表を見ると、上位陣との差は明白だ。
トップのRob Hoganと私の差はスコアで23打、タイムで25分36秒。
SGSでは51.1ポイントの差がある。この差は、今の私にとっては絶望的に大きい。
しかし、見方を変えれば、これほど大きな伸びしろがあるということだ。
マラソンを始めた頃、私は5kmも完走できなかった。
それが今ではフルマラソンも完走している。
上位者たちも最初から完璧だったわけではないのだから。
最下位からの景色——そして2026年へ
アップダウンのあるコースを走り切った73分間。
息を切らし、心臓が破裂しそうになりながらも、最後まで諦めずにボールを追いかけた。
ゴール後体は限界だったが心は不思議と満たされていた。
完走したという達成感。
そして来年はもっとやれるという確信。
最下位からの景色は、決して悪くない。
そこから見える頂上はまだまだ遠い。
しかし確かにそこにある。楽しみしかないよね。
2026年、セブンハンドレッドクラブに再び立つ。
その時はもう最下位ではない。
SGS150台で中位グループに食い込み、上位陣の背中をもっと近くで見ている自分がいるはず。
最下位からのスタート。また一から始めようか。
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**大会結果サマリー**
– 優勝:Rob Hogan(SGS 124.25 / 900pt)
– 2位:新本達也(SGS 125.14 / 675pt)
– 3位:大田仁(SGS 127.04 / 506.25pt)
– 参加者:12名
– 会場:セブンハンドレッドクラブ
**2026年リベンジ目標**
– タイム:65分以内
– スコア:95以内
– SGS:160以内
– 順位:最下位脱出、中位グループ入り
次なる挑戦へ。

